診療記録024:一歩を刻む、竜騎士の道
- 種族
- ヴィナ・ヴィエラ / 男性 / 25歳
- 職業
- 冒険者
- 経過
- 右踵腱断裂に対する組織修復術後
- 主訴
- 歩行訓練の開始に伴う恐怖と疼痛
- 処置
- 荷重制限下での歩行訓練開始。補助具の使用と段階的な筋力回復指導
診療室の床に置かれた木製の歩行補助具。
それを見下ろしながら、彼は小さく息を呑んだ。
「……足に、重さをかけるのが、怖いんス」
彼の右足首は、包帯の上からでもまだ硬さが残っているのがわかる。
修復は済んだ。けれど、再断裂への恐怖は簡単には拭えない。
「恐れるのは当然です」私は静かに答えた。「けれど、“恐怖を踏み越えること”もまた跳躍の一部です」
シシスは容赦なく補足した。
「大丈夫、切れたらまた縫うだけですよ。けど、怖がって足を出せなければ、一生跳べないままです」
竜騎士の眉がぴくりと動いた。
その挑発に、ほんの少し火がついたのだろう。
彼は補助具を手に取り、ぎこちなく右足を前へ出した。
――ぎゅっと握りしめた手のひらには、かすかな震え。
一歩。
さらにもう一歩。
痛みはある。だが、崩れることはなかった。
「……歩ける」
小さな声が、診療所の空気を変えた。
私は頷き、指導を続けた。
「今日はそれで十分です。筋肉は使えば応えてくれる。無理をせず、けれど止まらずに進みましょう」
彼は深く息をつき、仲間の視線を思い出すように遠くを見た。
「……必ず、また跳べるようにします」
私的記録:
再び跳ぶためには、まず歩くことから始まる。
その一歩を恐怖の中で刻んだ彼は、きっと竜騎士としての空を取り戻すだろう。
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