診療記録050:甘い渇き、乾いた取引 診療記録:内科
朝の棚は整っていた。先日の救急の残り香はとうに消え去り、瓶は黙り、床は乾き、薬草の匂いがまた主役に戻る。 鈴が鳴った。 扉から入ってきたのはララフェル。衣は簡素だが縫い目がいい。砂の上でも崩れない仕立て。足取りは軽いのに […]
続きを読む朝の棚は整っていた。先日の救急の残り香はとうに消え去り、瓶は黙り、床は乾き、薬草の匂いがまた主役に戻る。 鈴が鳴った。 扉から入ってきたのはララフェル。衣は簡素だが縫い目がいい。砂の上でも崩れない仕立て。足取りは軽いのに […]
続きを読む鈴の音が、今日は少し遅れて聞こえた。扉の外で、一度だけ誰かが息を整えた気配がある。 扉が開く。 そこに立っていたのは、ルガディン族の男だった。大きい。けれど、あの日担架に沈んでいた“重さ”とは違う。立っている重さ。自分の […]
続きを読む扉が開く前に、布と乾いた土の匂いが入ってきた。香辛料の粉が、ほんの少しだけ甘い。荷紐の麻が擦れる音。――歩いて暮らす人の、静かな音。 二人は今回も連れ立って来た。腹部の張りは前回よりはっきりしている。歩幅も姿勢も、無意識 […]
続きを読む診療所の扉が開くより先に、匂いが入ってきた。なめし革の甘苦さと、油の温い残り香。雨に濡れた外套から立ちのぼる湿り気に混じって、それは確かに“仕事場の匂い”だった。 現れたのはラヴァ・ヴィエラの女性。耳の先は外套のフードに […]
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