診療記録036:いつか、ふたりに話す物語 診療記録:人物記録・対話・非臨床 午後の陽が斜めに差し込む診療所の一角。書類棚を整理していた私は、一通の封をされていない封筒に目を留めた。 黄ばんだ封筒の表には、昔の私の筆致で「お父さん・お母さんへ」と書かれていた。 ──…続きを読む
診療記録035:小さな旅立ち、続く絆 診療記録:産婦人科 朝の診療所は、薬草の匂いより先に布の音がした。包み布を畳む音。替えの肌着を揃える音。小さな荷が、ふたつ分ある音だった。 出産から七日。彼女は椅子に座っていた。動きはまだ慎重だが、もう“恐る恐る”…続きを読む
診療記録034:ふたりの芽吹き、四つの祝い 診療記録:産婦人科 夜半、扉を叩く音がいつもより短く、強かった。開ける前から、呼吸の乱れが聞こえている。 彼女は夫に支えられて入ってきた。寝巻きの裾が急いで羽織った外套から少しのぞいている。歩けてはいる。だが、歩幅…続きを読む