診療記録037:頭を垂れる巨躯、重き一撃ののちに 診療記録:救急
鈴が鳴る前に、床が鳴った。 担架の金具が石畳を削り、扉が肩で押し開けられる。草いきれと樹脂の香りが、薬草の匂いを一息で追い払った。 「落ちた! 頭から! 最初は喋ってたのに、急に……!」 ルガディン族の男が担架に乗ってい […]
続きを読む鈴が鳴る前に、床が鳴った。 担架の金具が石畳を削り、扉が肩で押し開けられる。草いきれと樹脂の香りが、薬草の匂いを一息で追い払った。 「落ちた! 頭から! 最初は喋ってたのに、急に……!」 ルガディン族の男が担架に乗ってい […]
続きを読む午後の陽が斜めに差し込む診療所の一角。書類棚を整理していた私は、一通の封をされていない封筒に目を留めた。 黄ばんだ封筒の表には、昔の私の筆致で「お父さん・お母さんへ」と書かれていた。 ──双蛇党の従軍衛生兵としてカルテノ […]
続きを読む朝の診療所は、薬草の匂いより先に布の音がした。包み布を畳む音。替えの肌着を揃える音。小さな荷が、ふたつ分ある音だった。 出産から七日。彼女は椅子に座っていた。動きはまだ慎重だが、もう“恐る恐る”ではない。腕の中のひとりを […]
続きを読む夜半、扉を叩く音がいつもより短く、強かった。開ける前から、呼吸の乱れが聞こえている。 彼女は夫に支えられて入ってきた。寝巻きの裾が急いで羽織った外套から少しのぞいている。歩けてはいる。だが、歩幅は狭い。ひと波くるたび、足 […]
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