診療記録014:幻術の向こう、癒しの証明
- 種族
- ヒューラン・ハイランダー / 男児 / 5歳
- 職業
- ―
- 主訴
- 広範囲熱傷によるショック状態
- 診断
- Ⅲ度熱傷(顔面・胸部・両上肢)
- 処置
- 幻術による初期安定後、白魔法「ベネディクション」による生命維持と組織修復
午前の診察も落ち着いた頃、知人の小児科医ウィリス・メルヴァンから緊急の伝令が届いた。
患者は5歳のヒューラン・ハイランダー族の男児。街中の屋台火災に巻き込まれ、上半身を中心に重度の熱傷を負ったという。
すでに数名の幻術士による応急処置は施されていたが、それだけでは壊死の進行を止めきれず、患児の意識は朦朧としていた。
「幻術ではもう……これ以上は」
そう漏らしたウィリスの声に、私は頷いて応じた。
私は懐から白魔道士のクリスタルを取り出し、傷ついた小さな身体の傍らに跪いた。
「命を結ぶ光よ、その身を巡りて癒し給え──ベネディクション」
淡い光が、焼けただれた皮膚をやさしく包み、壊死を始めようとしていた肉の綻びをなぞるように再生の兆しをもたらしていく。
白魔法は、かつては禁忌とされていた。
今では、四つしかない白魔道士のクリスタルは、幻術皇と私だけが持っている。
「……それでもこの術が、誰かを生かすなら」
私はそっと手を引いた。
少年は深い眠りの中で、痛みから解き放たれたように安らかな表情を浮かべていた。
私的記録:
かつて禁じられたこの白の魔法が、今は命を繋ぐ術となった。
幻術を超えた癒しが確かにある。
私はそれを行使する者として、今日もまた、命と向き合っていく。
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