診療記録012:木洩れ陽の昼下がりにて
- 種族
- ラヴァ・ヴィエラ / 男性 / 41歳
- 職業
- 木工師ギルド 職人
- 経過
- 診断より3週経過。疼痛緩和継続中。
- 処置
- 食欲不振と倦怠感への対応。安寧な環境の維持。家族への精神的支援。
晩秋の陽が差し込む午後、再び彼の家を訪ねた。
彼はすでに床から起き上がるのも困難になりつつあり、今日も窓辺の椅子に体を預けていた。
静かに寝息を立てながら、娘が縫ったという膝掛けをかけている。
部屋には、かすかに樹脂と木の香りが漂っていた。
妻はそっとお茶を淹れ、娘は彼の足元に座って本をめくっていた。
時折、彼はわずかに目を開けて、微笑んだ。
この日は、先日森へ行ったことを再び口にした。
「あの若木、もう冬の準備を始めていたな。ああやって、生きていくんだな」
目を閉じながら語る声は、かすれてはいたが、どこか安心しているように思えた。
妻と娘は、彼の言葉に静かに頷いた。
「ねえ、先生」娘がぽつりと尋ねた。「お父さん、怖くないのかな」
私は迷わず答えた。「怖さがまったくないわけじゃない。でも、お父さんは大事な人たちとこうして過ごせている。それが、何よりの力になるんです」
娘はしばらく考えたのち、小さく「うん」と呟いた。
穏やかな空気のなかで、午後の日差しが家族の上に降り注いでいた。
私的記録:
死が近づくほどに、命の重さが澄んでゆくようだ。
声を交わし、笑い合い、ただ一緒にいることの尊さを知る。
今日という日が、もう一度、家族で過ごせる日であることに、心から感謝した。
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