診療記録013:木の香とともに 診療記録:終末期ケア
朝、彼の妻から連絡を受けた。 「呼吸が浅く、反応も乏しくなってきています」と。 私はすぐに支度をし、森を抜けて、彼のもとへ向かった。 部屋には柔らかな光が差し込み、いつものように木の香りが漂っていた。 彼は静かに横たわっ […]
朝、彼の妻から連絡を受けた。 「呼吸が浅く、反応も乏しくなってきています」と。 私はすぐに支度をし、森を抜けて、彼のもとへ向かった。 部屋には柔らかな光が差し込み、いつものように木の香りが漂っていた。 彼は静かに横たわっ […]
晩秋の陽が差し込む午後、再び彼の家を訪ねた。 彼はすでに床から起き上がるのも困難になりつつあり、今日も窓辺の椅子に体を預けていた。 静かに寝息を立てながら、娘が縫ったという膝掛けをかけている。 部屋には、かすかに樹脂と木 […]
彼が初めてこの診療所に来てから、2週が過ぎた。 疼痛は徐々に強まってきていたが、ケシの実から抽出した鎮痛薬と、処方した鎮静の香煙で、今のところは穏やかに過ごせている。 この日も、私は彼の住まいへと足を運んだ。 山あいの林 […]
診断から1週。彼は今のところ、穏やかに過ごせている。 疼痛緩和薬がよく効いており、体を起こして短時間であれば座って会話も可能な状態だ。 食欲はやや落ちているものの、水分は取れており、家族の気遣いによって笑顔も見られた。 […]
木工師として、彼は長くグリダニアの森に生きていた。 森の静寂を好み、樹々の声に耳を傾けるようにして材を選び、手仕事に心を注ぐその背は、決して多くを語らずとも、職人としての誇りを十分に物語っていた。 初めて診療所を訪れたと […]