診療記録036:いつか、ふたりに話す物語
- 種族
- ララフェル・プレーンフォーク / 女性 / 27歳
- 職業
- 医師(元双蛇党 従軍衛生兵)
- 主訴
- ―(回想録)
- 診断
- ―
- 処置
- 記録としての手紙の再発見・記憶の整理
午後の陽が斜めに差し込む診療所の一角。書類棚を整理していた私は、一通の封をされていない封筒に目を留めた。
黄ばんだ封筒の表には、昔の私の筆致で「お父さん・お母さんへ」と書かれていた。
──双蛇党の従軍衛生兵としてカルテノーに派遣されたあの日々。
あの場所には、癒すという行為を許さないほどの現実があった。
次々に運び込まれる兵士たち。
私はまだ幻術士だった。応急手当てと、せめてもの鎮静剤。
癒すよりも、苦しませずに送り出す方が多かった。
足首に着けられたトリアージのタグは、ほとんどが「黒」。
救うことを許されない命を前に、目を逸らすこともできず。
それでも、救える命のために奔走するしかなかった。
その合間を縫って、私は一通の手紙を書いた。
育ててくれた両親へ──「必ず帰る」と、笑って話したかった。
けれど、手紙を投函する前に、訃報が届いた。
グリダニア市街での避難誘導中、建物の崩落に巻き込まれたという。
誰かを守ろうとして、あの人たちは逝った。
戦争が終わり、グリダニアに戻った私はその手紙を封筒に戻し、棚の奥に押し込んだ。
そして二度と、触れなかった。
今日、十年ぶりにその封筒を開き、もう一枚、便箋を足す。
お父さん、お母さん。
今、私はこの街で診療所を開いています。
新しい命を送り出し、最期まで手を握りながら見送ります。当時の私に、何ができたのかは今もわかりません。
あの場所で抱えたものが、消えることはありません。
だからこそ、私はここにいます。もう誰も、独りきりで苦しんで逝くことのないように。
癒しの手を差し出せる場所を、守り続けるために。それが、貴方たちの遺したものへの、答えだと思っています。
私的記録:
喪失は、消えない。
けれど消えないままでも、人は手を差し出す理由を持てる。
だから私は今日も、この診療所に灯りをともす。
2件のコメント
リーザ先生の過去!!
前に少しお聞きしていた、育てのご両親のお話…🥺🥺🥺
大切な人を亡くす悲しみを知ってるからこそ、癒して救おうと人々に手を差し伸べられるんですね…
大切な人も失い、高度医療を施せるなら助けられる患者も命がこぼれ落ちていく。
そんな経験をしたから、せめて平時は手の届く範囲すべて救う。
それがリーザ先生の医療なんですよね。