診療記録013:木の香とともに

種族
ラヴァ・ヴィエラ / 男性 / 41歳
職業
木工師ギルド 職人
経過
診断より4週経過。意識混濁の時間が増加、食事摂取は困難に。
処置
鎮静措置継続・家族付き添い下での在宅看取り。

朝、彼の妻から連絡を受けた。

「呼吸が浅く、反応も乏しくなってきています」と。

私はすぐに支度をし、森を抜けて、彼のもとへ向かった。

部屋には柔らかな光が差し込み、いつものように木の香りが漂っていた。

彼は静かに横たわっていた。額にはうっすらと汗。呼吸は浅く、時折間が空く。

妻が彼の手を握り、娘がその枕元に座っていた。

私は声をかけることもせず、そっと脈を取り、頷いた。

「もう間もなくです。でも、苦しみはありません。どうか、そばにいてあげてください」

娘は目に涙を浮かべながらも、父の頬に手を添えた。

「お父さん……ありがとう」

まるで、その声に応えるかのように――彼の胸が、静かに上下を止めた。

森の木々が風に揺れ、窓の外では光が葉を透かしていた。

その瞬間は、あまりにも穏やかで、まるで森そのものが彼を見送ってくれているようだった。

私は静かに瞼を閉じ、家族とともにその旅立ちを見送った。


私的記録:

終わりは悲しみの中にあるだけでなく、安らぎの形もまた持っている。
最後の瞬間を、愛する者たちに囲まれて迎えられたこと。
それは、彼の生涯が誠実であった何よりの証だろう。

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