診療記録035:小さな旅立ち、続く絆 診療記録:産婦人科
朝の診療所は、薬草の匂いより先に布の音がした。包み布を畳む音。替えの肌着を揃える音。小さな荷が、ふたつ分ある音だった。 出産から七日。彼女は椅子に座っていた。動きはまだ慎重だが、もう“恐る恐る”ではない。腕の中のひとりを […]
続きを読む朝の診療所は、薬草の匂いより先に布の音がした。包み布を畳む音。替えの肌着を揃える音。小さな荷が、ふたつ分ある音だった。 出産から七日。彼女は椅子に座っていた。動きはまだ慎重だが、もう“恐る恐る”ではない。腕の中のひとりを […]
続きを読む夜半、扉を叩く音がいつもより短く、強かった。開ける前から、呼吸の乱れが聞こえている。 彼女は夫に支えられて入ってきた。寝巻きの裾が急いで羽織った外套から少しのぞいている。歩けてはいる。だが、歩幅は狭い。ひと波くるたび、足 […]
続きを読む扉が開く前に、ゆっくりした足音がした。急ぐ歩幅ではない。お腹を揺らさないよう、一歩ずつ確かめるような歩き方だった。 入ってきた彼女の肘を、夫が半歩後ろから支えている。妊娠38週。お腹はもう、抱えるというより前へ張り出して […]
続きを読む澄んだ空気が満ちる、森の外れの丘。ここまで共に歩んだ仲間たちが輪になって見守る中、竜騎士は槍を握り、深く息を吐いた。 「……行くッス」その瞳は、もう恐怖に囚われてはいなかった。 地を蹴る。走り出す足取りは力強く、軽やかに […]
続きを読む「跳べただけじゃ……戦えない」彼は静かに呟いた。彼の視線は槍の穂先に落ちている。 確かに、小さな跳躍は成功した。けれど竜騎士の真骨頂は、戦場で仲間と共に敵へ挑むこと。その舞台に戻るには、まだ大きな壁があった。 そこで私は […]
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