診療記録004:知らなかった涙の色
- 種族
- ララフェル・デューンフォーク / 女性 / 11歳
- 職業
- 無職
- 主訴
- 突然の下腹部からの出血
- 診断
- 初潮(第一月経)
- 処置
- 月経に関する基本的な説明と、生活上の注意点を丁寧に指導。
午前の終わり、診療所の扉が控えめにノックされた。
入ってきたのは、白い髪と深い紅の瞳をもったララフェルの少女。
言葉少なに椅子に座ると、彼女は顔を強ばらせながら
「……下着が、赤くなってたの。止まらないの」とぽつり。
詳細を聞き取るうちに判明したのは、
彼女は父子家庭で育っており、双子の弟と三人で暮らしているということ。
性についての知識がほとんどなく、
“血”というだけで、何か大きな病を思い詰めていたようだった。
診察の結果、これは間違いなく“初潮”――つまり、彼女が女性として成長し始めた証。
身体が無事に育っていることのひとつの節目です。
「これは怖いことでも、恥ずかしいことでもありません。
貴女が貴女として、立派に育っているという証なのです」
そう伝えると、彼女はしばらく沈黙し、
それからほんの少し、目尻に涙を浮かべて「……よかった」と呟きました。
月経の周期や体調の変化について、分かりやすく説明し、
必要な準備や日常生活での過ごし方についても紙にまとめて手渡しました。
次回はお父様と一緒に来院いただけるようお願いしています。
私的記録:
“知らない”ということは、ときに“恐怖”と直結する。
誰かがその恐怖を取り除く手助けをしてやれれば、それだけで未来は変わる。
……白い髪が揺れる背中が、帰り道で少しでも軽くありますように。
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