診療記録031:竜槍の影、仲間とともに

種族
ヴィナ・ヴィエラ / 男性 / 25歳
職業
冒険者
経過
右踵腱断裂に対する組織修復術後。初跳躍を成功。
主訴
跳躍は可能となったが、戦闘動作への不安を訴える。
処置
仲間との軽度な模擬戦を実施。戦闘動作を通じたリハビリ継続。

「跳べただけじゃ……戦えない」
彼は静かに呟いた。
彼の視線は槍の穂先に落ちている。

確かに、小さな跳躍は成功した。
けれど竜騎士の真骨頂は、戦場で仲間と共に敵へ挑むこと。
その舞台に戻るには、まだ大きな壁があった。

そこで私は提案した。
「仲間と模擬戦をしましょう。恐怖も、動きの鈍さも、戦いの中でしか克服できないことがあります」

診療所の隣、私とシシスの家の庭。そこには鍛錬用のスペースがある。
彼を待っていたのは、あの日も支えてくれた仲間たち――ナイトと幻術士。

ナイトが大盾を構え、笑みを浮かべる。
「遠慮はいらねえぞ。お前の槍はまだ錆びちゃいない」

最初の一合。
彼の突きは鋭いが、踏み込みが浅い。
次の瞬間、恐怖で体が止まり、盾に弾かれて尻もちをついた。

「……やっぱり、無理だ……!」
呻く声。再び心が折れそうになる。

だが幻術士が駆け寄り、短く囁いた。
「仲間の背を守るために跳んだ、あの日を思い出して」

その言葉に、彼の瞳がかすかに揺れた。

立ち上がり、深く息を吸う。
再び槍を構え、足を踏み出す。
恐怖と痛みはまだ残る。
それでも、仲間の声が彼を前へ押し出した。

「はぁぁっ!」

槍が盾を強く叩き、わずかにナイトの体勢を揺るがせた。
次の瞬間、彼は膝をつきながらも――笑っていた。

「……届いた。まだ、届くんだ」

仲間たちが頷き、笑みを返した。


私的記録:

竜槍の鋭さは、ただの筋肉や腱に宿るものではない。
仲間と共に戦う心が、その影を形づくる。
彼はもう一度、その原点を取り戻し始めた。

1件のコメント

  1. おれがの より:

    今回も読ませていただきましたー!☺️✨
    物凄く頑張ってて、ついに戦闘リハビリ…!!
    痛みと恐怖がふと蘇って心がゾワゾワする感覚、とてもわかってしまう…
    でもどうか負けないで頑張って欲しいなと思いました…頑張れ…😌✨