診療記録018:幻に宿る生命

種族
エレゼン・シェーダー / 女性 / 26歳
職業
冒険者
主訴
腹部膨満、胎動、つわり様症状
診断
魔物によるエーテル干渉(妊娠様症状)
処置
乱れたエーテルを鎮める浄化薬「静澄散(せいちょうさん)」を処方。安静と定期的なエーテル検査を指導。

本日の来院者は、緊張した面持ちのエレゼン・シェーダー族の女性冒険者でした。
彼女の訴えは深刻で、「胎動を感じるのに、妊娠のはずがない」というものでした。

問診を進めると、先日討伐した魔物の放った呪術に巻き込まれ、その日以降、
腹部の膨満感、吐き気、そして確かに感じられる胎動のような感覚に悩まされているとのこと。
さらに彼女自身、これまで男性経験がないことを明言しており、
妊娠の可能性がないにもかかわらず、妊娠のような症状が出ていることに強い戸惑いを感じていました。

明らかな妊娠の兆候はなく、エーテル視による検査でも胎児の存在は確認されませんでした。
詳しい診察の結果、魔物の術式によるエーテルの乱れが原因の「偽りの妊娠症状」と判明しました。


「生命を宿す力を偽りの形で受けることは、誰でも混乱します。
貴女の心配は当然です。ですが、貴女の身体に異常はありません。安心してください」

乱れたエーテルを鎮めるため、霊薬「静澄散せいちょうさん」を処方しました。
エーテルの安定を保つために、激しい戦闘や長距離移動は避けるよう指示しています。
1週間後に再検査のため再来院をお願いしました。


私的記録:

魔物が放つ術は時に残酷で、こうした精神的負荷を強いることがある。
特に彼女のような立場であればなおさらだろう。
彼女が次に冒険へ戻る日までに、幻が静かに消えることを切に願っている。

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